令和5年度林野庁補助事業「地域における非住宅木造建築物整備推進事業」、お越しいただいたお二人目の講師は、木材乾燥の第一人者である九州大学大学院農学研究院環境農学部門サスティナブル資源科学講座の藤本登留先生、テーマは「変化する木造・進化する木材乾燥技術」し、「木材乾燥は木材利用のエチケット」と「知っておきたい適材適スケジュールの木材乾燥」の2つのお題目でお話いただきました。
さて「木材乾燥は、木材利用のエチケット」とは、木質構造のパイオニアである、故杉山英男先生(東京大学名誉教授)のお言葉です。ゴルフが大好きだった杉山先生の、紳士のスポーツたるゴルフに絡めてのご発言であったと推察されます。
藤本先生には、乾燥した木材を使うと、どんな不都合が発生するのかのご説明をいただきました。このことは建築側・木材供給側共に、知っておくべき話であり、昨今、木材利用促進の動きが活発にはなっている中、あまり議論が進んでいないテーマです。クレームにも繋がる起こる可能性のある不都合としては、部材の収縮や柱の変形による材料間の隙間、カビの発生、木材表面上の割れ、あるいは予想以上の変形に伴う様々なトラブル等、木造住宅に暮らし始めた方々からのアンケート調査等を参考にご説明いただきました。。
「木材乾燥は、木材利用のエチケット」!、では、どのような乾燥手法が適切なのか・・・この問いに関しては、間違った認識が浸透しているのが実態です。先生からは天然乾燥と人工乾燥の長所・短所、次に人工乾燥の方法として、熱風による加熱、高周波による加熱、減圧があり、これらの組み合わせがあることのご紹介をいただきました。また芯持ち材の正角材や平角材は、物理的に必ず表面割れが発生しますが、約20年前に提案された‘高温セット’の原理を利用した方法を巧く活かすことで表面割れの抑制が可能なこと、適正な乾燥スケジュールを組むことでの重要性をお話しいただきました。
また会場から徒歩5分で行ける県内最大の乾燥施設を備える、大林産業(株)へ伺い、実際の乾燥の現場を参加していただいた方には視察していただくことができました。
最後に参加者を交えた討論の場が設けられましたが、後日も木材乾燥に関する質疑を受けています。先生からのご指導の内容も含め、その内容を下記のようなQ&A型式にまとめてみましたので、ご参照ください。