2021年度、令和3年12月22日(木)、山口県中央森林組合 山口総合支所にて開催いたしました。今回は、会のオリジナル・メンバーだけではなく、山口県建築士会、建築士事務所協会等のご協力をいただき、県内の設計者・行政の方々にご案内させていただき、予想を上回る43名の方にお集まりいただきました。

ご講演は、多数の木造建築物の構造設計に携わられ、数々の受賞歴をお持ちの 山田憲明さん をお招きいたしました。タイトルは
「地域産材を活かした木造建築物の事例」
「ふみの森もてぎ」、「あわくら会館」、「蛍遊苑」、「昭和電工武道スポーツセンター」、「滋賀林業会館」等を事例に示されながら、さまざまな立場の人の輪により生まれた中大規模木造建築物や、住宅向け一般構造用製材を工夫して用いることにより造られた、魅力的な大空間を有する木造建築物を、構造設計者の立場からご紹介いただきました。
木造化に向け重要なポイント
1,構造計画技術を駆使した、地域材を活用した木造建築物の事例、計画ポイント等を紹介
2,実現のためには地域のネットワークづくり、専門家や木材コーディネーターの参加が大切
3,地域材は地域ごとの特性(個性)が強いため、それに応じた使い方の工夫が必要
4,実際の施工工程に即した、タイムリーな材料供給を実現するためのノウハウが重要
ご講演の後、㈱市浦ハウジング&プランニングの奥茂さんの司会により、地域産材を使って魅力的な木造建築物を実現するために必要なことは何か? という課題に対して討論が行われ、様々な質疑やご意見をいただきました。
(参加者からの質疑)⇒(山田さんからの回答)
Q:木造と鉄骨造のコストを比較するとどうか。
A:高くない木(一般製材品等)を用いて、木材使用量をコントロールすれば、木造は鉄骨造より高くならない、金物費を抑えることもポイント
Q:丸太を用いる場合、乾燥は十分できているか。
A:通常高温乾燥で行い、表面含水率を測定、ヤング係数E50相当で計算、磨き丸太でなくラフな仕上がりを許容することも重要
・構造設計の際には、強度と含水率、ポイントはJAS等級区分や、それに代わる証明やエビデンスなど、無駄な設計を行わないためにも重要
(参加者のご意見)
Hさん(設計者):地域材活用の際には、品質、コスト、スケジュールなどを話し合う窓口が必要
Uさん(設計者):木材の数量、品質等を事前に供給者、発注者、設計者で共有できる事が大事。持続的な地域材活用のためには、地域単位のプロジェクトに対し、木材の調達方法を話し合えるネットワーク、材料のストック等が重要
事務局H:佐波川の森を守る木造建築研究会でも、徐々に連携の枠を拡げて、ネットワーク化を進めることが求められている。
(山田さんからの助言)
・滋賀県林業会館では、木造住宅の延長の技術を用い、非常に安いコストで、調達ネットワークの面でも上手く実現できた
・大分の武道館では、まず初めに乾燥可能な製材所を決めたのが成功要因、次に発注者が即決で分離発注を決めた事も大きかった。
ここで話題を、市外、県外の構造設計者との連携・コラボについて議論
(参加者からのご意見)
Yさん(設計者):長門市庁舎では、地域事務所が材料調整のみならず意匠面でも役割を発揮
Mさん(設計者)地域材(小さい材料)を使った建築づくりの研究会(勉強会)を進める必要あり
Uさん(設計者):プロジェクト単位での苦労やノウハウが次に活かせるための仕組みが必要。地域単位での連携、流域連携、県内連携…と少しずつ連携の輪を拡げていくことが大切
(山田さんからの助言)
・地域の構造設計者とのコラボも可能、具体化するプロジェクトを拡げていく。
・(JVの際の)地域設計事務所は、木材情報や行政とのやり取り等、大きな力を発揮するが、一方でデザイン等関わりきれない部分もあり(遠慮しすぎの部分あり)
・南小国庁舎の際には、地域事務所に構造や木の使い方について、有用な情報をいただけた
まずオーソドックスで単純な架構から始め、不足する技術を補うことを考えるのが重要
佐波川の森を守る木造建築研究会に期待されるもの
建築士会、事務所協会とも、研究会等での連携から始めること

