7月4日、愛媛県松山市にて愛媛県CLT普及協議会主催で、講演会および現場見学会が実施されました。現場見学会は、昨年、ウッドデザイン賞に輝いた愛媛県歯科医師会館と、当協議会で実験→仕様書の作成→カタログの作成が行われた媛トラスを採用した新日本建設(株)の製材工場で行われ、事前に、歯科医師会館の意匠設計をされた(株)矢野青山建築設計事務所の矢野さん、製材倉庫の構造設計および施工管理に携わられたユヤマ構造設計二級建築士事務所の柚山さんから建物の説明と共に、CLT・木造の面白さor難しさのお話がありました。
歯科医師会館は、準防火地域に建つ1,500m2を超える建築物で、耐火建築物にする必要があり、主要構造部は鉄骨造ですが、耐震壁にCLTが用いられており、CLTが鉛直荷重を支えていない形式でで利用されているため、そのままCLTが見える形で使われています。見た目に、木材利用にこだわらずに、バランスよく他の材料と組み合わせることで、木材の持つ質感が巧く引き出されている印象を受け、木造化・木質化の普及に向け、新たなメッセージが伝えられているように感じました。
新日本建設の工場は、軸組工法で計画され、耐震壁の面材としてCLTが使われており、屋根は媛トラスにより構成されています。媛トラスの実験は、スパン8mで始められましたが、その後、クリープ試験や追加の実大試験が行われ、12mを上限に接合部の詳細図がカタログにて紹介されています。そしてこの建物では、このシステムを応用して、スパン20mでの無柱空間が造られており、今後、屋根の木造化促進に向け、媛トラスの発展利用に期待がかかります。
媛トラスの開発は、今回、講演をされました英二さんの兄、一利さんのご尽力により進められ、今回視察させていただいた工場も、一利さんを中心に構造計画・構造設計が行われました。残念ながら昨年の5月、本建物の着工前に亡くなられました。この建物の他、愛媛県内には、いくつも非住宅の木造建築物の設計に携わられており、愛媛県内において’木造化促進’の立役者として活躍されていました。心よりご冥福をお祈りいたします。