6月21日(火)、約1年前に完成した南予森林組合事務所棟(愛媛県北宇和郡鬼北町)の完成見学会を兼ね、研修会が行われました。あいにくの雨天にも関わらず、約100名の方々が参加されました。主催は愛媛県、愛媛県CLT普及協議会、後援は愛媛県建築士協会、愛媛県建築士事務所協会。
この建物は、昨年度完成していましたが、新型コロナウィルス蔓延の影響で、見学会+研修会は、2度、延期になっていました。しかしこの間、木材利用優良施設コンクール審査委員会特別賞受賞、ウッドデザイン賞ソーシャルデザイン部門受賞、第二回アーキニアリング・デザイン・アワード入賞を果たしており。新建築2021年11月号でも取り上げられています。
山並みの背景を意識した、連続円筒シェルの屋根、
設計は、松山市に拠点を置く新企画設計、末光弘和先生(九州大学准教授)が主宰のSUEPの共同体、構造は、金箱温春先生主宰の金箱構造設計事務所で、屋根は国内で製造可能な最長寸法12mの複数のCLTによる円筒シェルが特徴的な建物です。
CLT利用促進 講習会が始まった
愛媛県CLT普及協議会では、2018年、2019年に、CLTの利用促進を目的にに、設計者向け講習会が企画されました。2018年度は計4回で行われましたが、計25名の受講者が7チームに分かれ、事務所と認定こども園のいずれかの課題を選択し、基本構想を立てるという実践型で行われています。そして第一回目は座学形式でしたが、第二回目と第三回目は末光先生、金箱先生から、約1時間、各チームのプランに対して、マンツーマン形式でご指導をいただけるという、贅沢な講習会が行われています。第4回目は、公開型のプレゼンテーションで、優秀チーム案には、末光賞、金箱賞(CLTで作った楯)が授与されています。
モチベーションの上がる講習会の実施
2019年度は、2018年度に倣い、実戦形式での講習会が行われましたが、演習課題は南予森林組合事務所棟、そして最優秀チームには、末光先生・金箱先生と共同で基本設計・実施設計を行えるという、豪華景品付きの講習会が行われました。最終回は、南予森林組合の理事の方々の前で、プレゼンテーションがが行われ、新企画設計のメンバーが提案されたプランが最優秀賞に選ばれました。
超短時間のスケジュール
その後、基本設計が始まりましたが、完成までに与えられた期間は、たった1年という、非常に厳しい期間で、基本設計、実施設計、そして建築工事が進められています。設計を待っていての発注では、木質材料の調達が間に合わないため、木質材料は先行発注で、そして施工図・加工図も元受業者が決定する前から、先行して進められています。
研修会での検討事項
研修会では、末光先生、金箱先生、柳原さん(元新企画設計)のご講演の後、「中大規模建築の木造化を推進するための課題を整理し、今後に取り組むべき方向性を取りまとめる」をテーマに、パネルディスカッションが実施され、他県でもよく議論となる、建築業界、木材産業業界全体の課題の他、愛媛県独自の課題も議論されました。特に今回の事務所棟の事例でも関係者が苦労された、木材の準備期間も踏まえた、適切なスケジュールが組まれることの重要性が指摘されました。そしてこれまでも愛媛県CLT普及協議会が実施してきた講習会の継続の必要性を確認し、研修会は締められました。
今後の研修会の予定とこれまでの取り組み
愛媛県CLT普及協議会では、2022年度は「耐久性」をテーマに3回の講習会が行われる予定です。これまでも上記の実践型の講習会の他、愛媛県を南予・中予・東予の3地区に分け、各地区の設計者・木材関連業者が協力してトラスを各チーム2つ製作し、実験をして、予定の荷重をクリアできたトラスは2つ、4つは期待通りにはいきませんでした。しかしなぜ弱かったのが?その理由を目で見て学ぶことができたようです。そして何よりも、近くにいてもお互いに知らなかった設計者・木材供給業者が顔見知りになったことも、大きな成果となったようです。